セーラームーンR3話の小倉陳利さん作画(推測) その1
小倉陳利さんは「新世紀エヴァンゲリオン」「フリクリ」をはじめとする
ガイナックス関連作品での活躍で特に著名なアニメーターで、
近年はTRIGGER制作作品で絵コンテマンとしても活動されています。
今回は小倉さんの作画について90年代前半はこのようなスタイルだったんじゃないか?という特徴(仮説)を
「美少女戦士セーラームーンR」3話の小倉さん担当と思しき部分から解説していこうかと。
※確定的なソースがある情報ではありません。あくまで憶測ですので参考程度に。
- 金田系的な特徴
ジブリ作品でも活躍された伝説のアニメーター故・金田伊功さん。
氏の独創的なスタイルは多くの模倣者を産みました。
小倉さんの作画にも金田さん的な傾向が幾つかあります。
■レイアウト
遠近感を強調したケレン味の強いレイアウトは金田さんの大きな特徴の一つ。
画像は「セーラームーンR」3話の小倉作画と思しきパートから。
奥のセーラームーンと敵に対して、手前側のセーラージュピターが大きく描かれている。ジュピター自体も左腕(手前側)と右腕(奥)には大きさに大きな差があり、広角レンズで撮った画のようにデフォルメされている。
金田さん風とは少し違うけど、小倉さんの特徴が出ているケレン味の強いレイアウト。
元のコンテの絵がどのようなものだったのかは分からないのであくまで参考程度に。
奥のジュピターの大きさを小さめにとって、 手前の敵とセーラームーンを立体的に描くことによって広角レンズ感を出している。
■効果線
キャラクターの動きに合わせて効果線が入るパターンは「ザンボット3」等の70年代の金田さんや、
そのライバル的存在であった70年代の友永和秀さんの作画によく見られる。※1
叩きつけられるセーラームーン。 小倉さんと思しき作画でもこの効果線のパターンがみられる。シルエット的に処理された破片にも注目。
- キャラクター作画
■影つけとしわ
この時代であっても、通常はキャラクターの顔のアップには作画監督の修正が入る場合が多い。
だだこの回は小倉さんの特徴がよく出ているカットも多いような。
作画監督の安藤正浩さんによる修正が強く出ていると思しきカット。 頬の柔らかなラインが特徴的なプニッとした絵が良い。
顔の目元から上に大胆に入る影は小倉さんと思しき作画によくみられる特徴。安藤さんによる部分修正は入ってそうな絵。
こういったパターンも。立体を意識したライン。これも顔の上下を分ける形で影が入っている。
■敵の顔のしわ
筋肉や骨のラインを意識したしわがシャープな形で入っているのがわかる。
こちらも影は目元から上についている。
■手
こちらもシャープで角ばった感じの形の取り方。カギ爪のような手の表情をとることも多い。
とりあえず続きは次回で。
小倉さん担当と思しき箇所の特徴的なポーズ作画やエフェクト、破片を「セーラームーンR」3話を中心に「美少女戦士セーラムーン」40話、「平成天才バカボン」21話も交えて解説していく予定。
※1 効果線を用いる手法は金田さん達から更に源流をたどると「ど根性ガエル」などのAプロ(現:シンエイ動画)の作画につながる(筆者が知らないだけでもっとたどれる可能性もあるかも)。
「ドラえもん」シリーズで知られる芝山努さんや、近年も「ふるさと再生日本の昔ばなし」で活躍された小林治さんの作画がこのAプロ作画の代表例。
これは芝山さんや金田さんの影響を受けた今石洋之さん(「グレンラガン」「キルラキル」「プロメア」の監督)の原画にもよく見られる特徴。