スタジオギグの作画(推測)
スタジオギグは、湖川友謙さん主宰の作画スタジオ『ビーボォー』から独立した
筱雅律さん、南伸一郎さん、山根理宏さんによって結成された作画スタジオで、80年代後半~90年代前半に目立った活動がみられました。
(『らんま1/2 熱闘編』などのクレジットを見るに向山祐治さん、佐藤哲也さんもメンバーだったと思われる)
筱さん、南さん、山根さんはビーボォー在籍時から金田伊功さんやその弟子の山下将仁さんのような作画を志向していた、ビーボォーの中では変わり種のメンバーでした。
(ビーボォーがメインで制作に関わったOVA『COOL COOL BYE』のおまけ映像『1985 BEBOW』収録のペーパーアニメにも金田調の作品がいくつかある。
金田調とは違ったスタイルなので話は逸れるけど、山下明彦さんや中村悟さんのペーパーアニメが格好良かった。)
『うる星やつら』のビーボォー作画回にも言えることですが、
スタジオギグの参加作品にはビーボォー(湖川)調と金田山下調が複合されたようなスタイルの作画がよくみられます。
■例
『ハイスクール奇面組』81話「オバケでびっくり!どろぼーもドッキリ!」より。筱さん作画?。
密度の濃い影の描写はインパクト抜群。エフェクトの描写もキレキレ。
主観の背景動画もあってかなり作画的に面白い回。
この回はいずれ単体で特集したいところ。
『ハイスクールミステリー学園七不思議』8話「10番の靴箱」より
少女の幽霊。湖川さんからの影響が感じられる顔のバランスのキャラクター。
『鎧伝サムライトルーパー』36話「決戦!カユラ対輝煌帝」38話「カユラ!聖なる目覚め」より
36話Aパートや、38話Bパートの復活した朱天と迦遊羅の戦闘シーンでは
顔や鼻の側面に湖川さん的に立体をとらえた影つけがみられる。
『鎧伝サムライトルーパー』38話「カユラ!聖なる目覚め」のBパートより
朱天が迦遊羅の攻撃を受けながらも捨て身の反撃に転じるシーン。
透過光のエフェクトが炸裂している。こちらもフォルムは金田調が入っている。
山根さんの作画かな?とも思うんだけど根拠は薄い。この辺りはもっと当時の作品を見ていけば分かってくるかも。
『らんま1/2 熱闘編』107話「らくがきパンダの呪い」より
山下将仁さん的なラインも少し入ったエフェクト。筱さん作画?。
同じく『らんま1/2 熱闘編』107話「らくがきパンダの呪い」より
『勇者シリーズ』のロボのようなメリハリの利いたプロポーションとBL影(黒い影)の早雲と、巨大八宝斎の火炎。山根さん作画?
エフェクトも『ゲッターロボ號』や『ファイバード』の山根さんの作画に近い。
『らんま1/2 熱闘編』134話「黄金の茶器、五重塔の決戦」より
オバケの使い方、レイアウト、エフェクトにも派手さがある。
『剣勇伝説YAIBA』28話「剛球勝負!弁慶を打ちとれ」より
※ディレイが酷いキャプチャで申し訳ありません。
巨大カッパとの戦い。勢いのあるフォルムのエフェクト。筱さん作画?。
火炎のディテールのオレンジ色の部分の食い込み方や消え方は山下さんっぽいかも。
■闘将!!拉麺男
最後に『闘将!!拉麺男』のスタジオギグ回のキャプチャが見つかったので簡単に解説。
スタジオギグは上村栄司さんの作監回(スタジオG7の担当回?)に参加。
ガッツリ派手なシーンが多いわけではないんだけど、ところどころに印象的な作画が散見する。
12話「子供村の大決戦の巻」より。手から火炎放射(!?)する力士。筱さん作画?。
火炎エフェクトは山下将仁さんに近いパターンで、
赤色の部分がカールするような形でオレンジ色部分に食い込んだフォルム。
定規で線を引いたようなグラフィックな形状も金田調の作画によくみられるパターン。
12話「子供村の大決戦の巻」と30話「さらば七百年の愛の巻」より
80年代の作品ではモブキャラクターでのお遊びもよく見られる。
『戦闘メカ ザブングル』の主人公ジロンや『聖戦士ダンバイン』のショウといった湖川さんが関わった作品のキャラクターに似たキャラや、
『キン肉マン』のアデランスの中野さん、南伸一郎さんの似顔絵、『ドラゴンボール』のクリリンが紛れ込んでいる。
その他のモブキャラクター作画に関してもやはり湖川さんの作画の影響を感じさせるものが多い。
24話「拉麵男の正体は!?の巻」より
伝説の拳士のイメージカット。
顔側面の立体的な影やアオリ(下から見たアングル)はまさにビーボォー的。
18話「毒サソリを倒せ!!の巻」より
破壊される門。
リアリティが感じられる影つけの煙作画と鋭角的なフォルムの破片。
30話「さらば七百年の愛の巻」より
エフェクト化した鶴が印象的な必殺技のカット。
こちらのエフェクトも金田調のグラフィックなフォルム。
『奇面組』や『らんま熱闘編』のギグ回は面白い作画が多いので『うる星』のビーボォー回込みでいずれ取り上げたいところ。